書くことでストレス発散してる

過去の恋愛のおもひでを語る

東京に憧れてた

「どこ住んでるの?」
「東京!」

大学生の頃、私は東京住みと答えていた。本当は違う。県民だった。

東京に憧れていた。

中学から都内の私立中学に通うも、自分が県民であることに劣等感を覚えながら過ごしてきた。遊ぶとなれば東京の中心地。皆んなは家から30分以内で行ける距離を私は片道1時間半かけて遊びに行った。

勿論皆んな垢抜けていて洋服も可愛いブランドものを着ていて私はそのブランド名すら読めずにいた。バッグは小学校の時の家庭科で作ったナップザックを背負って出かけた。私の中のお気に入りだった。一番可愛いと思っていた。友達には、

「◯◯ちゃん、そのバッグで来たの?」

と聞かれた。私は元気よく

「うん!」

と答えた。友達は顔を顰めた。

自分が田舎で育ったからだとは思わない。私の地元でも学生時代にモデルを齧っていたり、子役としてテレビに出ていた子もいる。その子は一際オーラがあったしスタイルも良かった。でも、私の東京コンプは間違いなくこの時に生まれた。

大学に入ると、自分がいかに辺鄙な場所に住んでいるのか痛感した。終電は23時半、電車は10分に一本。早く東京に着けるのは30分に一本しかなかった。電車に乗り遅れる=最低20分の遅刻は確定。なんて不便なんだ、と嘆きまくったが状況は変わらず。一人暮らしをさせてくれる経済的余裕も根性も私にはなかった。

就職活動では、「東京で一人暮らしができること」を軸に探した。寮がある会社や、自宅から微妙に通えない一人暮らしが必須な勤務地を選んで受けまくった。勿論、親に納得して家を出たかったので親が納得するような会社しか受けなかった。私は県民の呪縛から逃れたかった。


いざ、東京で一人暮らしを始めて4ヶ月が経とうとしている。私は自由を手に入れた。東京というステータスを手に入れた。代わりに毎日の家族の暖かさを失った。犬と戯れる時間を失った。祖母のオムライスと水餃子が好きな時に食べられなくなった。長い長い電車で考え事をする時間がなくなった。その代わりに、今は自信を持って言えることがある。

「どこ住み?」
「東京!」

私は東京で生きていく。