書くことでストレス発散してる

過去の恋愛のおもひでを語る

もう彼氏以外の人とは寝ないと決めた日

「顔出ししないけどかっこいいと思います」



こんなプロフだったから右スワイプした。あーこの人相当自分に自信あるんだろうなあ。私も顔出ししないでアプリやってるから気持ちめっちゃ分かるわ。マッチできたらいいなあなんて考えてた。


話してみて案の定面白かった。最初は大学とかサークルとかバイトとか。そうだ。大事だったことはお互い就活生だったこと。確か季節は5月の初めだった気がする。本命の企業があと少しってところだったな。
どういう業界受けてる、とか、ガクチカはこういうの話してる、とか。頭いい人だったから、すごく為になった気がするし、今の会社から内定貰えたのは確実にその人のおかげでもあるな。



彼は音楽系のサークルに入っていて歌がうまくて自分に自信があって身長が小さいのを気にしていた。私と2センチしか変わらなかったかな。でも俺は可愛い顔してるからみたいな感じで気にしてないようなフリをしていたっけ。責任取れないから二十歳まで童貞守ってたって言ってたんだけど、それも見栄張りだったかな。あの時の私は単純で純粋無垢な女の子だったから、すごーいって言って感心してたっけ。バカみたい。



彼とは渋谷で初めて会った。お互いリクルートスーツだったけ。

「見つけたかも」
LINEが来た。
「横見て」
横を見ると小さいけれど可愛い顔した男の子がいた。顔がタイプだったからあたりじゃんって心のなかで呟いた。


ニコニコしながら彼の方に向かって歩いて手を振った。


「おつかれ」
「おつかれさま」
「よく分かったね」
「なんとなくそれっぽいなあって思ったんだよ」


初めて会うのに初めてじゃない感じ、アプリならではの感覚だよなあって思いながらスクランブル交差点を歩く。

「とりあえずHUBでいい?」
「うん!HUB好きだよ!行きたい!」

センター街の入ってすぐそこのHUBに向かう。その日は平日だったかな。たしかハッピーアワーだった気がする。お互い好きなドリンクを頼んだ。疲れてたからすぐ酔いが回った。

「たばこ、吸っていい?」
「うん」

アメスピだった。タバコは吸ったことなかった。周りの友達はみんな吸っていたけれど、私は吸わないことをアイデンティティとしていた。でもその時の私は少し、背伸びしたかったんだ。

「吸ってみる?」

高校の同級生がタバコを勧める男だけは気を付けろよ。って言ってくれてたの思い出す。でも、その時の私は色々な世界を知りたかった。就活のストレスが溜まっていた。新しい世界を感じてみたかった。

「どうやって吸うの?」
「こっち持って、火つけるね。口につけて、息を吸うだけだよ」

最初は咳き込んだ。吸っていくうちに口の中がスースーしていくのが心地よく感じた。慣れてくると、美味しいかもとまで思えるようになった。私は、タバコを覚えた。

「そろそろでよっか」
「うん、いい感じに酔っ払った〜」
「よく行くバーが近くにあってさ、行ってみない?俺の知り合いもいるし」
「いいよ、行こ」



連れてかれたのはガスパだった。あ、ここか。19の時はよく来てたなあと思いつつ、階段を下りる。奥の腰掛けられる所に座った。

「何がいい?」
「甘いサワーならなんでも」
「おっけ」

飲み物を貰う。もう既にかなり酔っ払ってる。彼の友達が男女一人ずついた。常連らしい。彼の友達も混じり、複数名で話す。あーもう、お酒に任せてるからなんでもいいやあ〜全部楽しい。

もういい加減に酔っ払ってきて、横に肩を並べてた彼にもたれる。手を繋ぐ。いつものパターンだ。彼がボソッと呟いた。



「俺、彼女いるんだよね」



あーやっぱりね。皆んな男ってそうなんだよな。別に今言わなくても良くない?なに?彼女への罪悪感?まあそっちがそう言うなら私も本当のこと言うよ。



「私も、彼氏いるよ?」



彼氏とうまく行ってないから新規の男と遊んでるんだよ。



「え、まじ?」



超嬉しそうじゃん、何その顔。
そのままキスした。沢山した。皆んなに注目されながらするキスも悪くないなって思った。もう、欲のままキスした。気持ちよかった。新しい男とするキスはいつも興奮する。

「ねえ、行こうよ」

私は行かなかった。親に帰りが遅いって言われるのが嫌だった。泊まるときはいつも事前に伝えるから、急に外泊すると怪しまれる。めんどくさいのだ。

「やだ」
「なんでよ、絶対今日行った方が楽しい」
「ヤりたいけど今日は無理」
「えー、じゃあつぎ絶対しようね」
「うん、今日は帰る。送ってって」



駅まで送ってもらった。多分、お互いの恋人の話をした気がする。向こうは彼女にバレないかを終始気にしていた。ダサい男。そんなに気にするなら浮気しなきゃいいのに。



その後もラインはダラダラ続いた。男のセックスのためならなんでもする精神、本当に尊敬する。



一週間後ぐらい、終電で彼に会いに行った。都内のラブホ行ってなんとなくした。つまんないなあって思った。いつまでこんなことしてんだろ。お互い恋人がいること気にしながらやってた。ほんとくだらない。ベッドの中では就活のこととこれからの恋人との関係について語り合った。

「こういうのよくないよね」
「そうだね」
「俺、もう辞めるわ。彼女とも別れる。好きじゃないんだよな」
「そっか、がんばってね」
「そっちは多分続くと思うよ。俺らよりは希望がある」
「うーん、うん。頑張るわ、ありがとう」


「ぶっちゃけ、やってることやばいんだよな。だってこれ、浮気じゃん」
「そっかあ〜やばいことか〜。気持ち離れててもやってることは浮気だもんね」
「うん、相当やばい」



本当に奇妙な状況だったと思う。行為自体は気持ちよかったけど、終わったあと後ろから抱きしめられることも、腕枕もしてくれなかった。当たり前だ。彼女じゃないんだもん。好きでもなんでもないヤった用済みの女にはそんなことしない。




もう、やめようと思った。とりあえず、彼氏と向き合おう。私のこと本当に大事にしてくれる人を大切にしたいよね。傷つけるようなことしちゃダメだ。


本当は10時まで一緒にいるはずだった。でももう、話すこともなかった。5時の始発で帰った。
別れるとき、まだ彼は彼女にバレないか偶然遭遇しないか気にしていた。なんだ、やっぱり彼女のこと大事なんじゃん。

改札で別れた。

「じゃーね」
「うん、またね」




いつもだったら男女関係なく、人とお別れするときは必ず振り返るけれど、今回は振り返らなかった。もう過去のすっからかんの私とはおさらばしたかった。ワンナイトなんて何も意味もないって思った。自分のこと大切にしてくれる人を大切にしたい。ちゃんと自分とその周りの人と向き合おうって思った。不毛なセックスなんて男遊びなんてもう絶対しないって誓った。