書くことでストレス発散してる

過去の恋愛のおもひでを語る

理性と感情

その日はすごく酔っていて、何杯飲んだかは覚えていない。

一ヶ月にわたる大仕事を終え、久しぶりのお酒に溺れてしまっていた。

友達が呼んだ男も交えて宅飲みをして、ベロベロに酔っ払って深夜1時に解散。トイレで潰れていた時に介抱してくれた男が家まで送ってくれてLINEを交換、した気がする。というくらい記憶がなかった。

 

翌日スマホを見ると

「お水たくさん飲んでね!おやすみ」

とのLINEがあった。

「はーい!」

「今度ランチ行こ!」

 

…なぜランチ???彼なりの本命ですアピールの一部だとそういえば昨夜言っていた気がする。高学歴で見た目が整っている人は問答無用で遊んでいる。私はプライドが高いので、そういう人ほど雑に扱って下に見られたくないと思ってしまう。適当にがっつかない程度に返信。

 

「良いよー!」

 

翌週ランチに行くことが決まった。

 

当日。

どうも洋服とメイクの相性も良くないし、なんだか今日は調子が悪いなと感じた。でも、なんとも思っていない人だからいいやと思って家を出た。

 

彼を見つける。高い身長、切れ目長の奥二重、回転の早い会話、留学の話、最近の趣味はゴルフ。

んー、王道ありがちモテる男の会話。付き合う前のデートのテンプレートをまた繰り返す。彼の手のひらの上で泳がされたくないなと思いつつ、ノリがいいのでどうしても盛り上がってしまう。

 

午後は私の仕事が残っていたので、お昼だけの予定だったけれど、あまりにも盛り上がってしまったので勤務後も会うことになった。以前から興味があったゴルフの打ちっぱなしに付き合ってくれるらしい。

 

夕暮れ時、彼の家の近くの打ちっぱなしに行く。ここで一気に距離が縮まる。クラブの握り方を教えてもらって、フォームの確認、アドバイス。「ゴルフができる俺」を思う存分見せられて普通の女の子だったら即落ちだろうなと感じる。

 

その後、お腹が空いたから彼の家でご飯作ることになった。まんまと家デートにされているけれど、まあいっかと思った。男に料理を作るときは決まって肉じゃがを選ぶ。家に行って、一緒に料理という定番のデートをしてしまうとかえって恥ずかしくなってしまうのは私だけなのだろうか。

 

一緒に作った料理を顔のいい男と一緒に食べるのは世界一幸せだなと不覚にも思ってしまった。

 

その後近所の河原を散歩した。彼が練習中のスケボーを持っていくと言った。もちろん私もスケボーに乗ってみる。まだ危ないからって手を繋ぎながら乗る。慣れてるな、ずるいな。

この散歩コースは本当に大好きな場所だから、絶対に気に入った男にしか紹介しない。私の特別な場所だ。

 

川を眺めてお互いの恋愛観を語る。

 

「〇〇ちゃんは付き合ったらどんな感じなの?」

「うーん、さっぱりしてるよ!」

「おれ、なんか束縛されがちなんだよね」

 

うわ、元彼と同じだ、と心の中でつぶやく。こうやっていつも新しいこと経験させてくれて自分のペースがある男とのデートは本当に楽しいし夢中になる。中毒性があるから一緒にいる時間の一瞬一瞬がとてもキラキラしている分、会えない時の寂しさは計り知れない。だから女の子はみんなメンヘラにもなるし束縛もしたくなるのだ。

 

この男は絶対に好きになっちゃダメだ。本能でそう感じた。

 

「へえそうなんだ。私はさっぱりしちゃうから束縛とかわかんないや」

 

適当に流してこの話題を終わらせる。

 

「そろそろ行こっか」

 

帰りにコンビニに寄った。アイス食べようと話して、パピコがあったので半分こで同意。

 

「おれ、男子校だったからパピコ半分こが夢だった!」

 

可愛いところあるじゃん、、、

でも私の場合は男の子と散歩する時のテッパンだし、正直パピコを半分こしたのは何回目か思い出せなかった。今までの自分の計算高さに萎えた。こういう定番なことは本当に好きだと思った人と限られた回数でしかやらないから輝く思い出になるのに。

 

時計の針はもうすぐ0時を指す。

この前と同じように家の前まで送ってもらった。

 

「じゃあ、気をつけて!って、家の前だけど笑」

「送ってくれてありがと!じゃあね!」

 

絶対に好きになったらいけない人。もう会いたくないなって頭では無理矢理そう思うようにしているけれど、きっと今日のデートを思い出すたびに心が弾んでしまうだろう。

 

顔が良くて優しくて楽しくて、一緒にいるとまるで自分が少女漫画の主人公のようになったように感じて、新しいことを一度にたくさん経験させてくれる男は決まって危ない。ツツジの花の蜜はとっても甘いけれど、全部を吸い切ってしまうと後々苦さが伴ってくる。もうその手には乗りたくない、乗らない。

 

気持ちの良い夜風が私の感情も一緒に流してくれればいいのに、夏と一緒にこの感情も過ぎ去ってしまえ。

 

 

 

私は23歳の夏に、そうして終わりを告げた。